五感の相互作用を活かすクロスモーダルデザイン

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IoT時代に入って先ず注目を浴びているのは、増えるInputだ。
監視カメラ、人感センサー、音声入力と、取り扱える(或いは入手可能な)データが大きく増え、それらをどう扱ってよいのかに関する議論をよく聞く。しかしながら、データをどう解析するのかは、活用にあたっての入り口に過ぎない。
Outputをどのように設計するか。ユーザーベネフィットを考えるならば、ここで価値を見出せなければただの技術要素に終わってしまう。
そんな中、是非一つ覚えておいて欲しい言葉に、クロスモーダルというものが存在する。

クロスモーダルは身近な存在

クロスモーダルとは、何も新しい概念ではない。
経験値との掛け合わせにより、そこに存在しない筈の刺激を感じてしまうこと。五感の相互作用により生まれる錯覚。これをクロスモーダル効果と呼ぶ。
非常に身近な例を挙げるならば、日本人の多くが夏場に体験している事象として、いくつかの例がある。
一つは、かき氷の味覚。夏祭りを賑わす色とりどりのかき氷。その味はどれも同じシロップ氷なのだが、メロン・イチゴ・ブルーハワイと名づけられたかき氷は、あたかも異なる味覚であるとして、子供たちを中心に楽しまれている。
もう一つは風鈴。夏の暑さをかき消す清涼感をもたらすその音色は、一陣の風の象徴だ。しかしながら、実際に風を体に受けることなくとも、その音色だけで涼しさを感じた方も少なくはないのではないだろうか。
このように、クロスモーダル効果は昔ながらの原風景に、自然に存在する。

風鈴のクロスモーダル効果

注目を浴びたのはVRでの文脈

ではなぜ今クロスモーダルなのか。
大きく脚光を浴びることとなったのは、VRの一般への普及とその体験にある。
普及と言っても、まだまだ触れたことのない人も多いというのが実情ではあるが、SIE社のPSVRが世に出たことにより、それまでのPCを主戦場とした市場から一気に身近な存在になったことは確かだ。
この流れの中で、テレビ番組等でもVRを取り扱ったゲームが紹介された。
全体的にはテレビという媒体特性もあり、インパクト重視のものの紹介が多かったのだが、中でも注目に値するところとして、女子高生の家庭教師になるという体験を行うコミュニケーション型のゲームにおいて、体験者の感想として「吐息を感じた」というものがあった点だ。
ここだけ切り取ってみると、美少女好きゲーマーの妄想と馬鹿にする方もいるかもしれない。しかしながら、これが実験の結果、このような感想を述べるのは、女性に免疫のない人よりも、ホストなど普段から人と近い距離で接することの多い人の方が多いということが分かっている。
なぜか、という結論が先にお伝えしているクロスモーダル効果であり、五感の中での視覚と聴覚をVRという空間が専有した結果、経験に基づき、他の感覚がそこにあるべき刺激を自動的に補完したというわけだ。

増えるOutputにこそ注目が必要

上記の例は、VRという没入感の高い空間ならではの特異な内容かもしれない。
しかしながら、先に述べたように、クロスモーダル効果が生まれるのはそういった限定的空間には限らず、非常に日常的に発生し得るものなのだ。例えば博報堂が2015年に発表している「WRITEMORE」という下敷きのようなツールは、紙に線や字を書く際の筆記音を増幅させることで、書くことへの意欲を高めるという聴覚による相互作用を活用してプロダクト化している。
特にマーケティングに関わっていると、Output先としてモニターであったりポスターであったり、特定の枠にとらわれがちだ。しかしながら、音(例えば今であればスマートスピーカーのように、これまで設置されていなかった場所に音の発生装置が出現することも考えられる)や照明(DALIに代表されるような、プログラマブルなLED)といったこれまでとは異なる出口から情報を出すことも可能だ。

これまで実現が難しかった、絵や文字以外で人の心を動かすこと。
クロスモーダルは五感を総動員したコミュニケーションへの重要な手掛かりなのだ。

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タナカさん

兵庫県出身。2003年東京外国語大学大学院修了(学術修士)。ウフル・マーケティングインテリジェンス本部(旧マーケティングクラウド本部)のたぶんちょっとエライ人(弊社CSOの田中正道とは別人)。 データドリブンなマーケティングに関して、その仕組みの設計からクリエイティブまで経験。趣味はバルトやデュルーズといった現代思想の研究から草の根音楽活動までと多岐に渡る。要するにオタク。
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