先日浴室の水が止まらなくなったため水栓器具本体を交換してもらったのですが、蛇口が少しグラつくので「前のより安いのかな?」と思ってしまいました。
(実際のところはわかりませんし、新品できれいなので満足しています。)
と、そのとき頭に浮かんだのがメルセデス・ベンツのドア閉めチーム。
メルセデス・ベンツには、ドア開閉音をチェックしてチューニングする専門チームが存在すると聞いたことがあります。(これも実際のところはどうかわかりません。)
クルマの走行性能には直接関係はありませんが、クルマを保有する満足感のためにドア開閉音にまで気を配っているんですね。
考えてみればドアを閉めるたびに「バイーン!」と軽い音が毎回聞こえたら品質に対する満足感は激減しそうです・・・。
つまり、顧客にとっての「品質」とは、商品そのものが実現するメインの価値だけではなく、その商品を使うあらゆる接点において感じる・期待されるものだと感じたのでした。
人はなにで品質を判断しているのか
こんな実験の話を聞いたことがあるでしょうか?
協力者を2グループにわけ、同じワインをかたや500円のワインと伝え、もう一方は5,000円のワインと伝えて飲んだあとの感想を聞きました。すると、結果は5,000円を飲んだグループのほうが「美味しかった」と回答した割合が有意に高かったそうです。
(出典)
ワインは味より値段?:「主観的な脳」と快感
(カリフォルニア工科大学の心理経済学者たちによる実験 という記載の箇所を参照のこと)
この実験結果からわかることは、商品以外の情報に「顧客の感じる品質が上下される」ということだと思いませんか?
実際に品質が良いことはもちろんですが、見てわかるもの・触ってわかるもの以外には情報で伝えるしかなく、その情報を駆使して顧客に「品質が良いんだ」と思ってもらうことが大切だということになります。
顧客が感じる品質に価格も影響するということになりますが、品質が良いと感じてもらうための方法にはどんなものがあるでしょうか。
実際の品質以外に品質を伝える方法
商品そのものの品質以外のポイントで品質の良さを顧客に伝える方法として、例えば以下のような方法があります。
1.価格で伝える
「価格が高いからおいしい」「価格が高いから品質が高い」と思ってもらう方法です。ただし、飲んで(食べて)品質のイマイチさがわかるようなものについては、無駄に高いだけになってしまいますので注意が必要です。
2.視覚に伝える
照明
店内で品質が良く見えるように、最適な照明を使うこともできます。例えば蛍光色の照明よりも電球色の照明のほうがよく見えない分美しく見える例もあります。(これはVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の分野のため詳細は割愛・・・)
3.聴覚に伝える
音
メルセデス・ベンツの例にも見られるようにドア音の演出や、エンジン音の演出も顧客体験に影響します。
4.触覚に伝える
スーツの生地の厚さ
スーツなども生地の良さは一般の人には一見してわからないもののひとつなのではないでしょうか。もちろん厚い薄いで実際の品質は判断できないと思うのですが、筆者は生地が厚いと良い生地だと自動的に思ってしまいます(笑)。
Macのモニタの重さ
ノートブックを開いてMacのモニタを持ち上げる際、適度な重みがあります。ちょうどよいところで止めやすいという機能性はもちろんあるのですが、その重さが、作りがしっかりしている(=品質が良い)と感じさせてくれます。
5.情報で伝える
ストーリー
クロード・ホプキンスのシュリッツビール。
売上が低迷していたシュリッツビールに対してクロード・ホプキンスが提案したのが製造工程の開示だったそうです。当時どのビール会社も「ピュア」であることを宣伝していた(そして製造工程もほぼ同じだった)そうですが、シュリッツビールが製造工程を宣伝に使ったところ、顧客が「品質が高い!」と感じたため売上があがったそうです。これも商品そのものは変わっていないのに品質(というより顧客の品質知覚)があがった例ですね。
比較対象を使う
● 当社比○倍!
既存商品との数値比較の例は身近ですね。
● everlane
everlaneは、既存アパレル小売と同程度の品質の商品を自社価格と既存小売の価格で商品ページに表示しています。これは既存小売との価格比較で、品質を顧客に想起させているとも言えます。
● Mac vs Windows
MacはWindowsと比較した宣伝で差異をアピールしていました。PC(Windowsを指している)が以前の不具合はないから信じてくれと言うと、Macが「それ前にも聞いた」と返すという内容で、対称的にMacは品質が高いということを宣伝しています。実際の動画は Youtube などで「Apple’s Get a Mac – Broken Promises」で検索してみてください。
2006年より、アメリカ合衆国およびヨーロッパで、”I’m a Mac”, “I’m a PC” の台詞から始まるGet a Macと呼ばれるCMを放映していた。それには、カジュアルな服装のMac役のジャスティン・ロングと背広にネクタイのPC役のジョン・ホッジマンとの2人のショートコント仕立てで、Microsoft Windowsとの比較広告を行っていたもので60編以上ある。
(出典) Wikipedia
などなど色々ありますが、つまるところ、商品そのものではなくそれをとりまく「情報」も含めて顧客にとっての品質、と言えます。
まとめ
今回はデジタルマーケティング領域の話ではありませんでしたが、商品をとりまく情報を構成するのはデジタルでも同じです。デジタルでの情報デザインに興味がある方はこちらの記事も参照してみてください。ということでまた次回!
フルタ
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