退職ブログをご存知だろうか?多くは、はてなブログなどのオープンサービスで展開されているようだ。
【退職ブログエントリー集合!】「会社を辞めました」を集めてみた【退職・退社・転職エントリー】
退職ブログにはどのような効果があるのだろうか?
リクルーティングの面で考えると、退職ブログを読むことで会社の中身(ホンネ)を知ることができるという見方ができる。足つぼマッサージのようなものだろう※。
※足つぼマッサージは痛みがある場所から臓器の不具合を調べる。出口から入り口を調べるというわけだ。
募集要項やリクルート広告には良いことしか書かれない。それは広告である以上仕方ないが、求職者はやはり生の声を知りたがっているだろう。なにせ転職には多くのエネルギーが要るので、できるだけ環境の良い会社を選びたいということだ。
そして、セルフブランディングという点でも、自分がどういう経緯で退職に至ったかを周知することで、自らのパーソナリティを知ってもらう良いチャンスであるということが、退職ブログを書く人のモチベーションなのかもしれない。
というわけで私も人気コーナーであるMCラボで退職ブログを書いてみることにした。
入社のきっかけ
私のキャリアは少し特殊で、学生時代から10年間自分でビジネスをやっていたため、フルコミットで会社員をやった経験がなかった。
音楽業界という特殊なバックグラウンドなので、前職を辞めた後、2年間青山学院大学のビジネススクール(ABS)に通っていたのだ。そのとき「マーケティングコミュニケーション」の授業でゲスト講師として登壇したのが、ウフルCSOの田中正道だった。
ちょうどジョブハンティングをしている時期で、ウフルもリクルートをしているということで、面談を受けることになった。ビジネススクールでもマーケティングの科目はあまりピンときておらず、「セールスフォースって何?」のような状態だったが、なんだかんだの縁で、ウフルにお世話になることになったのだ。
ウフルでのポジション
私は、デジタルマーケティングのコンサルタントとして、当時のマーケティングクラウド本部に配属された。
当時はエリック本部長の下、厳しい指導に耐えソーシャルリスニングの基礎を叩き込まれた。血を吐くような努力の結果、私はデジタルマーケティングのスペシャリストとしてデビューすることになる。
(右の写真:エリックさん)
マーケティングクラウド本部は、セールスフォース・ドットコム社の製品であるSocial Studio(ソーシャルリスニングからソーシャルアカウントの管理までできるツール)や、Marketing Cloud(コンシューマー向けのマーケティングオートメーションツール)の導入支援のために作られた部署だったが、徐々にデータマーケティングや、元々のSIerとしての開発力を活かしコンサルティングを武器に独自でデータ同士をつなぎ合わせ新たな価値を生み出していくビジネスにシフトしていく。
ウフルの独自技術であるenebularを使えば、DBやAPIなどを非常に簡単につなげることができる。エンジニアではない私もセッションに参加したが、ある程度のプログラミングスキルがあれば簡単に動かすことができるし、そのためのNODE-REDが沢山インスト―ルされている。
このあたりをバックエンドとして使いながら、Webサービスを実際のお客様にカスタマイズモデルとして提供するというような案件にプロジェクトマネージャーとして携わる中で、業界問わず様々な提案を行うチャンスがあり、大変楽しく、また吸収するものが多い日々となった。
ウフルの能力と必要とされる能力
オリジナルビジネスであるSFA(営業支援システム)コアの導入支援SIから、マーケティングクラウドの導入支援、昨年から始まったIoTのコンサルティングとデジタルマーケティング。それもデータをクラウドに集め、形にして出すということを広いレンジでデリバリーできるのが、ウフルの特徴だろう。
基本的に新しいテクノロジーを相手にするので、常に不確実な状況へ勇気を持って突っ込める能力が必要となる。「未知との遭遇」の連続である。多くのプロジェクトは経験したことのないもので、それはこれからもそうなるだろう。
なぜなら、IoTやマーケティングオートメーション、ビッグデータ活用は、まだまだ黎明期でナレッジはあっても実績がないことが多いからだ。汎用化されたモデルは未だ存在しておらず、ゼロから要件を組み立てる必要がある。それには、クライアントの持つ目的から課題を特定して、戦略やキャパシティから逆算するという非常に高度なスキルが必要となる。
リスクを恐れずゴリゴリ進むという私の特性にはマッチしていたし、MBA3年生(卒業後1年目)という意味で、理論を実践の中で試すことができたのは大きかった。
また、「多様性」を掲げるウフルの環境は、メンバーもいろいろなバックグラウンドを持っている。そういうメンバーで未知との遭遇に立ち向かうのは、ある種の異種格闘技戦のようなものであり、ファイターである自分の血を滾らせた。(実際にはキックボクシング以外の試合には出たことはないが。)
なぜウフルを離れ、次になにをやるか
私が入社した2015年4月は80人程度だった会社が、わずか2年足らずで200人程度の大所帯となった。また、IoTという大きなリブランディングがあり、会社の環境が大きく変わっていった。
以前、ビジネススクール時代にエニッシュ(株式会社enish)のCOOである公文さんがゲストスピーカーでいらっしゃる機会があり、その中でおっしゃっていた、成長中のベンチャーの話を思い出す。
「会社の成長は変化の連続なので、悲しいかな全員が一緒に変化できるわけではなく振り落とされる人が出てくる。悲しいけど仕方ない話。」
まさにこれが私にもあてはまって、ギリギリまで、一緒に変化するか振り落とされるかを悩んだものである。石の上にも3年ということで、もう1年やってみるという選択肢もあったように思う。
ただ、これは私の性格もあるだろうが、2年弱という客観的に見ると短い期間だが、前述のとおり未知との遭遇を繰り返す時間はエキサイティング過ぎて、まるで精神と時の部屋に入ったかのような時間だった。ウフルが得意とする高速PDCAはメンバーのキャリアにおいても同じなのだ。
そういう中で、自分が今後やってみたい方向性が徐々にブラッシュアップされてきた。IoTが会社の主軸になっているウフルで、最先端のテクノロジーにフォーカスされるのに対して、どのようにして人の心を動かすかという部分に興味を持つようになったのだ。
現在のデジタルマーケティング、特にプロモーションの分野で存在する会社は、大きく2つの種類に分けられるだろう。
一つはクリエイティブに主軸を置くポジション。私が携わってきた音楽ビジネスはまさにこちらの典型で、そのプロダクトやサービスの良し悪しを直感的に決める。もしくは過去の実績で決めるというアナログなパターンだ。多くの事象は暗黙知でノウハウ化されており、クリエイターやプロデューサーの実力も含め定量化されづらい。
もう一つはデータにフォーカスしたポジションだ。アドテクなどはまさにこちらに分類されるだろう。ユーザーを1 to 1で認識し、過去の行動履歴からセグメントを作る。クライアントサイドは過去のCPAから効率的なセグメントを導き出し、メディアサイドは過去実績から効率的にマネタイズできる属性を返す。これらをリアルタイムで最適化し、瞬きの間に自動的にマッチングする。
獲得広告を最適化させるという点で最も効果的ではある一方、この手法は分類(セグメントをどう切るか)がカギになるので、定性的・感情的な面にどこまでリーチできるかという点で限界がある。
この右脳と左脳のような話をやっていきたいと考えるようになった時、もう少しWebマーケティングのフィールドで戦ってみたいと思うようになった。ウフルのIoTやデジタルマーケティングよりも、より原始的なビジネスの中に自分の求めるものがあるのではないかと考えるようになったのだ。
簡単に言うと、成長期のベンチャーはすごいスピードで変化していき、中にいるメンバーも同じく変化していく。そして、その変化の方向が全員同じとは限らない。
2つの選択肢があって、会社と共に変わるか、自分の道を行くかである。私は後者を選んだのだ。
今の気分
現本部長であるタナカさんから移籍先で結果を出すようにキツーく言われているので、サシ飲みした時に呼び戻されることのないようにしておく必要がある。タナカさんをはじめウフルには人間味のあるメンバーが多くて、ファミリーのような環境だった。
そのためか、正直寂しいとか悲しいとかはまったくなく、またみんなにいつでも会えるという感覚なのだ。
ウフルは自由で常に状況が変化するアグレッシブな環境であり、自分のジョブチェンジすらその一環に思えてくるのである。多くの思い出と仲間ができたことがウフルでの何よりの収穫だ。
というわけで、1月31日でウフルを退社することになった。私のようなエースがいなくなると大変だ!経営が傾くぞ!という心配は重々承知だが、ご安心を。すでに私は優秀なコンサルタントを多数育成済みだ。
私の記事を読んで「NOWAYさんいないならなー」と思った人も問題はないだろう。あなたのマーケティング上・ビジネス上の課題を、優秀なコンサルタントが解決してくれるはずだ。
それでも、私の記事を楽しみにしていてくれたファンの皆さま、そして、私のキックボクサーとしての活動に興味を持っていただいた皆さま(3月に1年ぶりに試合へ復帰する)は、ウフルの問い合わせフォームから私を指名してもらうか、私のSNSからコンタクトをいただければ幸いである。ウフルの協創の精神は受け継がれていくのでウフルと私の次の環境で新しいビジネスを作ることは十分可能だ。
優秀なコンサルタントは最後の退職ブログでもリード獲得に余念がないのだ!!
それでは、みなさん一旦さようなら。またすぐに会いましょう。
2017年1月31日
株式会社ウフル マーケティングインテリジェンス本部 マーケティングソリューション部 マネージャー
井上 裕介
NOWAY
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