狭域ビジネスとデジタルマーケティング

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デジタルマーケティングといえば、距離を飛ばした繋がりをイメージする方も多いかもしれない。その一方で、狭域ビジネス・エリアマーケティングにおいてもデジタルマーケティングの重要性が増してきている。

狭域ビジネスとは?

先ず、消費者の行動を注視したとき、その消費の80%は自宅から2km圏内で済まされるという。商圏分析の初歩として、コンビニであれば500m以内の徒歩圏でカバー人口を3,000人程度、食品スーパーで2km以内の徒歩や自転車行動者を対象に5,000~10,000人程度を出店目安としている。
この限られた領域のビジネスで成功を納めた事例とされるのが、リクルート社のホットペッパーだ。その最大の特徴は、個々の熱量を意識した展開。一人ひとりの営業が「プチコン」として提案する。それも、広くチェーン全体に向けてではなく、あくまでも対面している店舗に限定して。結果として、個々の店舗の熱量の伝わるコンテンツとして紙面を埋め尽くす形となった。
その一方で、重視されたのが明確な方針。営業する商材と業界は絞り、一人一日20件訪問する。これを、電話帳記載のその業界店舗の15%を超える、若しくは100件を超えるまでは変えない。
全ては「地元の消費を活性化し、地域を元気にする」というコンセプトの下、実行された。
この代表事例を見ると、狭域ビジネスは一般的なデジタルマーケティングの理論とは異なるロジックで動いていると思う方もいるかもしれない。

重要なのは人を動かすこと

デジタルマーケティングの進んでいる一つの方向性として、単純に単体の成果を見て最適化するのではなく、如何に人(の心)を動かすのかという点がある。最たるところでデジタル広告のトレンドとして、アトリビューション分析というものがある。
これは、コンバージョンに至る経路をこれまでのように一広告単体の成果のみで見るのではなく、例えばディスプレイ広告を見たがクリックしなかった場合と、全く見もしなかった場合での効果の違いなども見ていく。所謂ビュースルーをしっかりと評価する形だ。
例えば単体でのCPAでは リタゲ > アドネットワーク1 > DSP > アドネットワーク2 といった順で効果が出ていたとして、通常であればアドネットワーク2を除外する。しかしながら、ビュースルー評価を見ると、実はリタゲ広告が効果を上げていたのはアドネットワーク2でのビュースルーがあったためと分かった場合、これを外してしまうとリタゲ広告のCPAが上がってしまう恐れが出てくる。この効果をしっかりと係数として測定することで、外すべきか、外さないべきかというところを判断可能となる形だ。
アトリビューション
実際、こういったビュースルーを評価する形で、広告効果の効率が数倍上がったという事例もある。ここで重要なのは、ビュースルーさせたディスプレイ広告のクリエイティブの質だ。何を見て、どう認知したか。その内容によって次回接触時の動きというのは変わってくる。
先のホットペッパーがコンテンツの熱量を重視して成功したのと同じように。
Opportunities for Growth

ソーシャルマーケティングも同様

同じように、マーケティング理論として語られるアドボカシーマーケティング*1も人の心を如何に動かすかが重要だ。
日本におけるソーシャルマーケティング界隈では、未だにインフルエンサーマーケティングの方が語られるベースとしては多いが、しっかりとファンを捉え、高いエンゲージメントを維持し、金銭の対価として動いてもらうよりも、本心で動いてもらう。この方が周囲の人間の心を動かせるという点では自明とも言える。

*1 アドボカシー(advocacy):顧客との強固な信頼関係を築くことを目的に、顧客の意向を最優先、徹底的に顧客本位で接し長期的な利益獲得を目指す、信頼ベースのマーケティング手法。

狭域ビジネスにもデジタルを

このように、狭域ビジネスの成功事例と、デジタルマーケティングの向かっている方向性は一致している。そして、物理的距離が近いからと言って、デジタルマーケティングが使えないわけではなく、寧ろ生活の中での接点を増やし、より利便性高く繋ぎ止める上でデジタルの重要性は益々増している。
そもそも、クレイグスリスト*2を筆頭にデジタルを用いたビジネスは狭域での成功から全国区へと広がっていったものも多い。ましてやサイネージを筆頭に、物理的接点がデジタルとの組み合わせで増してくるIoT時代。その融合はもはや必須と言えるだろう。

*2 クレイグスリスト(Craigslist)1995年にローカル情報を交換するためのサイトとして開設され、現在世界50カ国以上での展開、毎月20億ページビューを誇る個人間取引の巨大掲示板サイト。

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タナカさん

兵庫県出身。2003年東京外国語大学大学院修了(学術修士)。ウフル・マーケティングインテリジェンス本部(旧マーケティングクラウド本部)のたぶんちょっとエライ人(弊社CSOの田中正道とは別人)。 データドリブンなマーケティングに関して、その仕組みの設計からクリエイティブまで経験。趣味はバルトやデュルーズといった現代思想の研究から草の根音楽活動までと多岐に渡る。要するにオタク。
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