情報をデザインするということ(1)

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弊社ではArt of Dataというキャッチコピーの元、情報の可視化を行うサービスを展開させていただいているが、「他のBIツール/ETLと何が違うの?」といった質問を受けることが多い。
実際、単純に複合的なデータソースを組み合わせてグラフ化するという行為自体は、数々のBIツールが実践していることだ。これらと我々が実践していることの違いの一つに「情報をデザインする」ということがある。今回、及び次回の2回に分けて、この情報をデザインするということについて触れたいと思う。

デザインするとは設計するということ

世間一般に「デザインが良い」というと、「かっこいい」「かわいい」といったビジュアルのインパクトに意識が集中しがちだ。だが、非常に身近な存在として、チラシや雑誌など、日常的に接する、必ずしもかっこよくもなければかわいくもない中にも「良いデザイン」は多々ある。

デザインという言葉は、そもそも本来は設計するという意味だ。
先に挙げたようなチラシや雑誌では、「情報をわかりやすく伝える」ことがデザインの目的であり、如何に情報が伝わったかでデザインの成否は判断される。この成果を得る上で必要な要素は多岐に渡り、先ず最初に興味を惹くという点では、ビジュアルのインパクトもその一つではある。一つではあるが、一要素に過ぎない。
インパクトのあるビジュアルで人目を惹けても、その内容が伝わらなければその設計は間違いとなる。つまり、全体としては「良いデザイン」とは言えない。重要なのはこういった全体設計がどのようになされているかということなのだ。

情報設計が重視されるエディトリアルデザイン

先の例で挙げたチラシや雑誌のデザインは、エディトリアルデザインという領域が大きな比重を占める。別の言葉で言うならば、レイアウトの領域だ。
もちろん例外はあり、前衛的な構成のものも存在はするが、チラシや雑誌におけるデザインの主たる目的は、如何に気持ち良く読んでもらい、その内容を伝えるかにある。そのため、タイトルの視認性、飛ばし読みを可能にする見出し、理解力を上げる写真や図版の挿入に始まり、読みやすい文字量やブロックを形成するための段組みなど、一つひとつの要素に関して体系的なノウハウが蓄積されている。
分かりやすいところで言えば、タイトルが一番大きな文字で、一定以上の面積を占め、他の要素よりも余白を広めに取るといった作りにするものや、引用などの内容の異なる段落は一文字分インデントさせるなどといったテクニックが例として挙げられる。

その他にも、見出しの文字を太字ではあるが、小さ目に設定することで知的な雰囲気を醸し出すことができたり、逆にジャンプ率を高めて大きく設定することで、短時間での流し読みが簡単にできるようになるなど、一見ただ文字を流し込んでいるように見える紙面などでも事細かなデザイン=設計がなされているのだ。
エディトリアルデザインにおけるデザインは、グラフィックデザインにおけるデザインに比べ地味ではあるが、非常に計算的な要素が多く、より「設計」という言葉がしっくりくる内容とも言える。

重要になるインフォメーションアーキテクチャ

「デザイン」という言葉が「設計」という本来の意味合いを失うことなく、継承している例をご確認いただけたのではないかと思うが、もう一方で情報を設計するという意味合いでは、インフォメーションアーキテクチャ/インフォメーションアーキテクト=IAという言葉がある。
DIKW
Web業界ではある種Webディレクターの上位概念のような役割として用いられがちな言葉ではあるが、カリフォルニア芸術大学デザイン戦略MBAプログラムディレクターのネイサン・シェドロフ氏が提唱するように、データ(data)を情報(information)へと編集し、経験を伴わせ構造化することで知識(knowledge)へと昇華、さらには知恵(wisdom)へと転換するための情報のデザインを行うことこそがインフォメーションアーキテクチャリングの本分である。
そして弊社が近年取り組んでいるデータの可視化が数多あるBIツールと異なるのは、正にこのIAに真剣に取り組み、何にでも対応するコンポーネントを用意して可視化するのではなく、個々のデータの意味やその受け取り方などを考慮して設計を行っている点にある。

…と、前置きのような内容で終わってしまって恐縮ではあるが、次回はもう少しこのIA、そしてArt of Dataという点に関して展開させていただく。

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タナカさん

兵庫県出身。2003年東京外国語大学大学院修了(学術修士)。ウフル・マーケティングインテリジェンス本部(旧マーケティングクラウド本部)のたぶんちょっとエライ人(弊社CSOの田中正道とは別人)。 データドリブンなマーケティングに関して、その仕組みの設計からクリエイティブまで経験。趣味はバルトやデュルーズといった現代思想の研究から草の根音楽活動までと多岐に渡る。要するにオタク。
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