ウフルは約1年前に、IoTカンパニーとしてリブランディングを表明した。IoT(Internet of Things)は2016年現在において、VR、AI、フィンテック、シェアリングエコノミーなどと並びトレンドワードであることは間違いがないが、じゃあIoTで何するの?どんな風に使われているの?と聞かれると、まだパッと具体例が浮かばないのではないだろうか。
今回はこのIoTを少し優しい視点で解説してみたいと思う。
※この記事は2016年11月15日に開催されたイチゴ会(ABS Alumni朝活セミナー)での弊社CSO田中正道の講演を元に起稿している。
IoTの経済効果
Ciscoによる、2013年~2022年の10年間のNPV※試算では、IoTおよびIoE(Internet of Everything)の経済効果は約1,440兆円にのぼるという(そのうち、日本では約76.1兆円)*1。これには例えば、重工業や製造業、配送、物流でのオペレーション改善、人や車などの動きを可視化することでのマーケティングデータの有効利用、また、完全に新たなサービスやイノベーションが起こり、それによりもたらされる価値が含まれている。
※Net Present Valueの略。事業の現在価値。投資判断に使う。
*1 参考:Cisco
ここで考えなければならないのは、IoTの言葉の定義であるInternet of Things、つまりデバイスとインターネットが繋がるということだけで、これだけの経済効果が果たして本当にあるのだろうかという点である。
実は10年以上前から、モノとインターネットを繋ぐという試みは多くの日本企業においてチャレンジされていた。しかし、ただそれだけでは、世の中にインパクトのあるイノベーションがあったとは言えないのではないだろうか。
IoTはITとOTを繋ぐもの
IT(Information Technology)によって、世の中は大きく変わったと言われる。2000年のインターネット普及率は37%ほどだったが、2013年には80%を越えるほどになっている*2。
*2 参考:デジタルアーツ
一方で、OT(Operation Technology)は生産効率という点で、日本に多い重工業や製造業は大切な成長要素となるため常に進歩が求められている。
IoTの本質は、Cloudサービスの普及とインターネット回線の高速化・安定化により、ITとOTをコネクトできるようになるということなのではないだろうか。
つまり、今までは限られたデータ同士で分析していたのを(例えば、Operation内のデータのみで最適化していたなど)、Cloudサーバーを介して幅広い外部データと結合することで、新たな発見、示唆、最適化のチャンスができるということだ。
さらにデジタルツインの技術(実際のオペレーションを簡易ファクトリーとしてデスクトップ内で再現するコマンドセンター)を用いることで、実際のオペレーションを止めることなく簡単にPOC(実証実験)を実施することができるようになり、イノベーションのチャンスが拡がっているのである。
データ活用の可能性と課題
IoTは地方創生の観点でも注目されている。地方が持つインフラを、いかにデータを見える化して活用できるかという点が地方活性化のための鍵となるが、ここに一つの課題が存在する。
世の中に存在するデータはデバイスやインフラの普及によって毎年40%ずつ増えていると言われている一方で、実際に分析され活用されているのはたった0.5%程度だという話だ*3。
*3 参考:e27
データを活用することで得られるファインディングスは限りなく、それをビジネスに活かすことで、企業は大きな成果をあげることができるに違いないだろう。
しかしながら、イノベーションのジレンマにもあるように、社会が変わったからといって会社は簡単には変われないものなのだ。過去の成功体験やビジネスモデルを変えることは簡単ではない。企業は一つの岐路に立たされる。データと向き合い新たな可能性を模索するためにチャレンジを始めるか、データを無視し過去のビジネスプロセスをそのまま続けるか、ということになる。
IoTはそいういった意味で大きな転機となるだろう。理由は、IoTは一つの企業では成り立たないという点にある。データを見る時に、一つのデータを見るだけでは、得られるファインディングスも少ない。複数のデータを同時に分析することで初めて、貴重なファインディングスが得られるのだ。
つまり、データを持つ複数の企業が「協創」することで、IoTは価値を発揮する。地方創生の観点で言えば、日本に存在する沢山の優秀な中小企業が、彼らの持つデータを別の企業のデータと組み合わせることで、大きな価値を作ることができる。
これを地方自治体単位で行うことができれば、ものづくりや観光をはじめとした日本の価値向上を、IoTを通じて行うことができるだろう。
IoTとデジタルマーケティングの今後
さて、MCラボの本題であるデジタルマーケティングはIoTによってどう変わっていくのかに話を向けてみよう。現在デジタルマーケティング上の一つの大きなキーワードは、DMPを利用したユーザー行動ビッグデータの分野だが、実際ビジネス規模としてはあまり期待ほどではないというのが感覚的にあるのではないだろうか。
その要因の1つには、行動データの活用先がDSP※による広告配信以外に見出せていないということがある。これは個人情報のポリシーが扱い辛いというのが最大の原因であり、匿名での広告配信では利用できるが、マーケティング利用になるとプライバシーの問題という点がネックになっている。
※Demand Side Platformの略。広告主側に最も最適化するための仕組み。
しかし、IoTを通じてデバイスやデータの接点が増えることになり、それを正しく解析してアウトプットにつなげることができれば、匿名のままで最適なサジェスチョンを直接デバイスに返すことも可能になる。
そうなった場合、ユーザーの検索などという行動も過去のモノになり、ユーザー行動そのものがインプットになり、適切なアウトプットを自動的に受け取れるというような世界がやってくるかもしれない。
あくまで想像の域を出ないような話だが、IoTによってウェブの世界とリアルとのつながりが拡がることで、デジタル上での最適なデータ活用の形も変わってくることは間違いないだろう。
NOWAY
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