マーケティングで使える5つの心理学手法

MARKETING MEETS PSYCHOLOGY
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今回はマーケブログ定番の「○つの手法」を送る。
このタイトル自体(一部で飽きの声も上がっているものの)、限られた文字数で価値を伝えるためのマーケティングのテクニックの一つであることを記すとともに、早速本題に入ろうと思う。
尚、前シリーズ読者の方から見ると、「キャラ設定の一貫性が大事と言っていた張本人が速攻でキャラ変えてる!」と聞こえる気がするが、前シリーズ末尾の囲みのコメントが自キャラ、本文側は啓蒙的な内容だったのでちょっと真面目に書いていたというところがあるのであしからず。…早速と言いながら前置きが長くなったので今度こそ本題に入る。

アンカリング効果

まず最初に紹介するのはアンカリング効果。これは、認知にバイアスをかける手法だ。
つまりどういうことかというと、事前に情報を出しておくことで基準値を設定し、判断基準として認識してもらうというもの。
よく使われるところでは価格設定。テレビショッピングなんかでは殊更頻繁に、それも多重的に使われている。

「通常価格29,800円のところ、10,000円OFFの19,800円でのご提供!さらに、番組終了から30分以内にご購入の方に限り、そこから5,000円特別割引の14,800円にてご提供致します!」

…こんな文言を聞いたことはないだろうか。
これは例えば単純に14,800円のバッグとして紹介されるのに対して、29,800円が14,800円という奉仕価格になっているという印象を与えることができ、破格の値段になっていると感じさせるという算段だ。
もちろん、景品表示法があるので、正価自体は29,800円で間違いないのだが、その正価を見せるのと見せないとでは感じ方が大きく異なってくるという話。

もっと深いところでは、次のような実験結果もある。

1)一般的なもので、5,000円程度の商品を用意し、2つのグループに見せる。
2)片方のグループにこの商品が10,000円です。高いと思いますか?安いと思いますか?適性価格はいくらだと思いますか?と問う。
3)もう一方のグループにはこの商品は1,000円より高いと思いますか?安いと思いますか?適性価格はいくらだと思いますか?と問う。
アンカリング効果
すると、10,000円と提示された側は7,500円ほど、1,000円と提示された側は2,500円ほどと答える傾向が見られたというものだ。
このように、先に印象をつける情報を与えることにより、フラットに見た場合とは異なる結果を得ることができるというのがこの手法の特長だ。

ウィンザー効果

これはクチコミ効果ともいわれる手法で、直接的な伝達よりも第三者からの「噂話」の方が信憑性を持つという効果だ。
これは身近な関係に置き換えて考えるとより分かり易い。
普段から自分を含む周りをよく褒める上司がいたとして、その上司が直接自分のことを褒めるのと、他の誰かから、「○○上司があなたのことを褒めていたよ」と伝えられるのと、どちらの方が嬉しいだろうか。恐らく後者だ。

これは利害関係のないところで話が出るというところに意味がある。
例えば商品の話であれば、自社の商品をその会社の人がアピールしても、ただの宣伝文句にしかならない。一方で、その会社と関係のないコミュニティなどで多数の人がその有用性を語っていれば、その情報はより信憑性を持つわけだ。
そこまで距離感がなくとも、利用者の声といった情報がランディングページなどで効果を示すのもこの効果の一環と言える。

バーナム効果

占い占いに信憑性を感じるのは、このバーナム効果が原因だ。
内容としては「誰にでも当てはまること」をそれとなく曖昧に伝えることで、自分に該当していると認識させるもの。
具体的には、下記のような捉え方やレベル感に依っては誰にでも該当するような言葉が用いられる。

・あなたは正しい判断や正しい行動をしたのかどうか真剣な疑問を持つときがあります。
・あなたの願望にはやや非現実的な傾向のものもあります。

こういった言葉遣いをマーケティングで用いることは、セグメント分けが難しい場合などに有効だ。というのも、セグメント分けを行う一番の理由は、特定のタイプの人に適した情報のみを展開することで、正に自分(だけ)に向けた情報であるという錯覚を与えることにあるからだ。
具体的なテクニックとしては、「最近」「ずっと」「少なくなった」「多くなった」など、時間や量を表現する言葉を用いた問いかけを設置し、人それぞれにその期間や量を自分に当てはめて考えてもらうように仕向けるといった具合だ。

権威への服従原理

さて、ここまで読んできて、それぞれの心理学テクニック自体はよくよく考えてみれば至極ありふれたものだと感じた方も多いのではないだろうか。一方で、「心理学」に基づくという情報と、なんだかよくわからないカタカナの名称があることで、「ちゃんと世の中的に認められた/検証された」手法なのだと暗黙の裡に受け入れた方も多いのではないだろうか。

これもまた心理学上の一つの現象で、権威への服従原理と呼ばれている。
つまり、心理学という学術と、その中でもフォーマット化された名称があるという事実が、専門的な知識であるというラベル付けを行い、情報に信憑性をもたらしているのだ。
ここで語っているようなテクニックも、私がただの経験則だけで話していたとすれば、その情報価値は随分と落ちてしまう。しかし、こういったラベルのおかげでその情報価値の正当性が担保された形で提供できているというわけだ。

決定回避の法則

googlepng本稿を展開させていただいている「○つの手法」といった記事は、今となっては実にありふれた存在であり、WEB上を探せば非常に多くの類似記事を探すことができる。
中には5つと言わず、10、いや、30以上の情報を展開したものも見受けられる。このように数で勝負といった内容は、初期選定の段階、WEBで言うならば検索エンジンにおける検索結果上での一覧に於いて、「情報が豊富」という意味で興味喚起の効果を生む。だがその一方で、選択肢の多さというのは機能不全を起こす面もある。

例えば今回紹介した中から、一つだけ手法を選んで早速試して欲しいと言えば、そこまで選定に困りはしないのではないだろうか。だが、これが30もの手法を紹介していたら、全てを読むのも大変であり、その中から一つ選ぶということも面倒になってしまうかもしれない。そこで面倒と思ってしまうのは決してあなたの怠惰ではない。これもまた心理学上の現象であり、「決定回避の法則」と呼ばれるものだ。
つまり、人は選択肢が多すぎると「選べない」状態に陥ってしまう傾向にあるのだ。

尚、5つというのは人が短期記憶で認識することができるギリギリのボリュームだということも豆知識として加えておこう。

最後に

今回は非常に定番ながら、マーケティングで使える心理学テクニック集をお送りした。
展開しようと思えばまだまだ多数のテクニック・手法が存在するが、それはまたの機会に。

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タナカさん

兵庫県出身。2003年東京外国語大学大学院修了(学術修士)。ウフル・マーケティングインテリジェンス本部(旧マーケティングクラウド本部)のたぶんちょっとエライ人(弊社CSOの田中正道とは別人)。 データドリブンなマーケティングに関して、その仕組みの設計からクリエイティブまで経験。趣味はバルトやデュルーズといった現代思想の研究から草の根音楽活動までと多岐に渡る。要するにオタク。
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