人の顔で認識させるクリエイティブの基本

the mechanism of recognizing faces
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すっかり面白マーケブログの色合いが強くなってきたMCラボだが、ラボの良心(?)ライターとして、読後すぐに使えるマーケティングテクニックを今日も配信させていただきたく。そんなこんなで本日はクリエイティブに関する話をしたい。

人の目線は「顔」を優先的に認識する

バナーにせよ、キービジュアルにせよ、人物写真がよく使われている。
なぜか?これは単純に、人が「顔」を認識する能力に長けており、意識を向けてもらうのに適した素材だからだ。
生後8ヵ月ほどまでの赤子は顔も全体認識で捉える傾向にあるが、それ以降は顔を特別なものとして捉え、特に目・鼻・口といったパーツごとにしっかりと要素を捉えて認識しようとする。ここに更に、日々のコミュニケーションを通して、様々な表情を読み取るという経験が積み重ねられることで、脳科学的にもこの認知力の高さに関する研究は日々積み上げられている。

もっとも、そんな研究に依らなくても、もっと親しみ深いところにその証左となる事例は潜んでいる。
今は遠い夏場―ここ最近の急な冷え込みを考えると彼方の思い出として想起されてしまうが―を盛り上げ、冷涼感をもたらしてくれる、心霊写真の多くがこれに起因する。
何も心霊写真を否定するわけではないが、必ずしも霊的ではない写真などが心霊写真として認識される背景には、影などの組み合わせで顔に似た形が形成された時、そこに対する認識力が高まってしまうという事実があるのだ。

どのように視線誘導させるかが重要

マーケティングにおけるクリエイティブには、必ずしも正解はない。
それでも、それぞれに目的があって、それを達成するためのセオリーが存在する。
それゆえ、バナーやキービジュアルというものは、瞬間的に認識してもらうことが重要となってくるため、認知作用の高い「人の顔」が使われるケースが多いわけだ。

ではどのような顔写真が良いのか?
これも実は正解はないが、先ず検討すべき点として2つのポイントがある。

A)視線アリ(読者に視線を向けている)パターン
視線アリ

最も瞬間認知作用が高くなるのはこのパターン。自分に視線が向けられているというのは、例え広告の写真であっても、何かメッセージ性を感じるものだ。但し、ここでメッセージ性を持つのはその人物写真自体であることを認識しておく必要がある。


B)視線がキャッチコピーに向いているパターン
視線がキャッチコピー
これは、人の目線の先にあるものに興味が行きやすいというまた別の作用を利用したもので、瞬間認知作用こそ目線アリのものに劣るものの、キャッチコピーを読んでもらいやすくするという効果を付与できるパターンだ。つまり、言葉によるメッセージ性を伝えやすくなるということだ。

例えば文字数が少なく、わかりやすいキャッチコピーと組み合わせる場合であればAのパターンで顔の近くにキャッチコピーを置けば最大公約数となるケースが高く、少し長いキャッチやもう少ししっかり読んでほしいキャッチコピーの場合はBのパターンが最適というようなセオリーが成り立つ。

嗜好性に合わせた写真で効果UPを

こういった視線誘導に合わせて検討しなくてはいけないのが、どのような人物写真を用いるかだ。
人物写真が与える影響は、表情による気分の醸成のほか、性別、年齢、業種イメージ、ファッション性など多岐に渡る。美醜もその一つだ。
人の主観によるが、美しいと感じるものであったり、性的な表現の方が注意喚起効果は高いという点はあるのだが、それだけで人物写真を選ぶことは危険で、ターゲットの嗜好性や訴求内容とのマッチングが非常に重要となってくる。
ここでも以前ご紹介したアンカリング効果が発揮されるからだ。
最初に関連付けて見られる情報であるが故に、その印象がその後の読後感に及ぼす影響は強く、非常に慎重な選択が望まれるポイントとなる。

もちろん他にも様々なクリエイティブ上の検討ポイントはあるが、ファーストコンタクトのポイントとなるバナーやキービジュアルの写真選び一つでも、ただある素材を使うのではなく、こういったポイントを考慮して検討するだけで驚くほど効果に違いが出てくることがあるので、参考にしていただきたい。

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タナカさん

兵庫県出身。2003年東京外国語大学大学院修了(学術修士)。ウフル・マーケティングインテリジェンス本部(旧マーケティングクラウド本部)のたぶんちょっとエライ人(弊社CSOの田中正道とは別人)。 データドリブンなマーケティングに関して、その仕組みの設計からクリエイティブまで経験。趣味はバルトやデュルーズといった現代思想の研究から草の根音楽活動までと多岐に渡る。要するにオタク。
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