それは突然に起こりました。
10月4日火曜日、お昼のミーティングが終わって席に戻ると、同僚のお兄さん(bachoというバンドのTシャツを着ていたアラサー)から急に言われた一言。
「いまSNSで一番ホットな話題何かわかる?」
そりゃあ僕もウェブ業界人の端くれですよ!けど…うーん、Uber EATSの話は散々したしなぁ…。
そして、彼はこう言ったのです。
「ハイスタ新譜出した、今日。」
…………????!!!
「え?いつ…?」
「だから今日。ゲリラリリースだって。」
これはヤバいことが起きたぞ!伝わらないかもしれないが、ヤバいことが起きたのです!
ハイスタとはなんぞや?という方へ
ハイスタというのは、Hi-STANDARDという16年前に活動休止した伝説的なパンク・ロックバンドです。界隈のバンドを束ね、AIR JAMというフェスを主催。AIR JAM世代という言葉が生まれるほど、いまでも影響力を持っています。
2011年にAIR JAMを復活させて以来数回ライブに出演していますが、精力的な活動はなく、新曲のCDが手に入るなど誰も思っていなかったのです。
SNSに出さずしてSNSで拡がる
今回の新譜リリースは、事前に一切の告知がありませんでした。そればかりか、発売から一夜明けてもメンバーのSNSではリリースについて一切言及されていません。
4日の時間ごとの投稿数推移がこちら。10時台には4件程度の投稿しかなかったのに、11時台に少しずつ気付く人が現れ、12時台に跳ね上がります。
ハイスタの新譜が店着してて、ビックリ
— Sunday (@ryo_sunday_) 2016年10月4日
Twitterで今回の新譜発売について、最初に言及されたのが11時6分のこちらのツイート。
ある日偶然フラッとCDショップに行ってみたら、ハイスタの新譜が並んでいるという驚きの体験が得られたわけです。
ハイスタ、お帰りなさい
Hi-STANDARD
ANOTHER STATING LINE pic.twitter.com/isbMhxt3oG— 鹿野 淳 (@sikappe) 2016年10月4日
その後、11時33分に音楽ジャーナリスト鹿野淳氏のツイートをきっかけに、爆発的に拡散していきます。
ハイスタから教わる心地よい不便さ
現代のインターネット社会では、音楽を簡単すぎるほどすぐに聴くことができます。
YouTubeで検索すればミュージックビデオがアップロードされているし、配信やストリーミングにも多くの曲がラインナップされています。試聴できる機会もたくさんあり、音源自体はネット経由ですぐ手に入るという便利さの中、CDを買って聴くというのは本当に面倒くさい。
しかし今回のハイスタの新曲は当然ミュージックビデオなど上がっておらず、違法アップロードも間に合いません。
ハイスタの新曲なら好きに決まっている!という人も、CDショップに出向いて購入し、家に帰らないと聴けないのです。
散々待たされた(出るかもわからなかった)新曲が急にリリース。偶然その情報をキャッチした時点で、もうCDショップに並んでる様子を見るのが楽しみで仕方ありません。
CDショップに入って商品を買い、家に持って帰って曲を聴き、感想をまたSNSで共有するというプロセスの全部がワクワクしっぱなしだったという人は少なくないはずです。
不便さがもたらしたワクワク感は、便利さに囲まれた現代では新鮮な体験だったかもしれません。
ハイスタの勝算とは?
ハイスタは全盛期とされる時代から、メディアにほとんど露出せずDIY精神を持って自主レベールでインディーズバンドとして活動をしていました。
メディアの在り方は変わり、インディーズバンドもソーシャルにメディアを持てるようになりましたが、それでも今回敢えて自分たちからは何も発信していません。
今回のハイスタの勝算は、ファンの持つメディア力。
敢えて告知せず突然リリースするという“話題“と”体験“を提供することで、それに熱狂するファン達が自ら広告塔になってくれたのです。
ファンによる投稿は、嘘がなく、また熱量がダイレクトに伝わります。
本当に良いと思う音楽、体験は、それだけで人に伝えたくなる。そのピュアな原動力が感動を拡げていくきっかけになりました。
お金を払って宣材を揃えるのではなく、自分たちの音楽を良いと思ってくれているファン、レコード屋さんにだけプロモーションしてもらう。
Hi-STANDARDの今回取った戦略は、現代のSNSが生み出した繋がりを利用した最高にパンクなマーケティングだったと思います。
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Top image by:AIR JAM2016
エモジマ
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