情報差を利用して商売した結果「財」を成した紀伊國屋文左衛門
唐突ですが、紀伊国屋文左衛門さんという人物をご存じですか?
紀伊國屋 文左衛門(きのくにや ぶんざえもん、寛文9年(1669年)? – 享保19年4月24日(1734年5月26日)?)は、日本の江戸時代、元禄期の商人である。元姓は五十嵐氏。名は文吉。俳号は千山。略して「紀文」(きぶん)と呼ばれ、「紀文大尽」と言われた。生没年もはっきりしないなど、人物伝には不明な点が多く、半ば伝説上の人物である。「架空の人物である」とする説もあるが、実在したとする説が主流である。
出典 : Wikipedia
このかた、江戸と紀伊の国(現在の和歌山県)を渡り歩く行商だった人で、江戸と紀伊の国での木材の価格差に着目し、安く仕入れた木材を高く売ることで財を成したそうです。(* ちなみに紀伊國屋書店とは関係がないとのこと。) この場合の価格差を、江戸と紀伊の国での木材の価格という情報の差「=情報差」と言い換えることもできます。
この情報差を経済用語で「情報の非対称性 ( Information Asymmetry ) 」と言います。文左衛門さんの例で言うと、文左衛門さんは紀伊の国での相場を知っているけど、江戸の商人は紀伊の国での相場を知らないため江戸の相場 (より少し安い?) で木材がよく売れ利益が出た、というお話で、「売り手」と「買い手」の間の情報差が商売を加速した好例といえます。
現在において、「売り手」と「買い手」の間にこの「情報差」はまだ存在するのでしょうか?また存在するなら、どのように応用できるのでしょうか。
現代に「情報差」は存在するのか?
現在では、インターネットがあれば世界の情報をリアルタイムに収集することが可能になっています。文左衛門さんの例の「価格差」について言えば「価格.com」や「amazon」で瞬時に最安値を確認でき、もっと言えば遠方からも商品を取り寄せることが可能で、距離的制約もなくなってきているように思えます。
しかしながら、江戸時代から 200年たった現在のような情報社会でも「情報差」についてはまだまだ存在するようです。
「情報差」を利用してヒットした現代の好例
■日本であたり前のテリヤキソースをアメリカに持ち込んだ「吉田ソース」
「吉田ソース」をご存知でしょうか。アメリカは主に西海岸で販売されている醤油ベースのソースで、アメリカでは知らない人はいないほど有名だそうです。創業者の吉田潤喜氏が母の照り焼きソースを参考に作ってBBQで使ったところ、評判が評判を生み、売れたとのこと。日本では照り焼きソースや焼肉のタレはあふれていますが、アメリカにはなかったわけですね。地域差・文化差による情報差が成功の原点となった例と言えます。
* 同僚が夏休みに西海岸に行くというので買ってきてもらいました。(ちなみにコストコでも買えます。)
■コンビニコーヒー
10年以上前、ボストンに1ヶ月以上滞在する機会があり、そのときコンビニの中でコーヒーを抽出するマシンがあったのに驚きました。当時日本にはなかったためです。それがいまや日本のコンビニでも淹れたてのコーヒーがどこでも飲めるようになっていますね。吉田ソースの例とはアメリカ→日本という線が逆の、これも地域差という情報差を利用したマーケティング例です。
■オーバーグラス/ブックマーカー/ウォータージャグ
続いては、言語差。日々新しい商品が日本に入ってきますが、最近、元々日本にもあった商品が、商品名を変えて売られることが増えているような気がします。これは「言語」という「情報差」を利用して、既存の商品を新しいものと認識させる→新しい価値観を認知してもらおうという例です。
- オーバーグラス : 老眼鏡
- ウォータージャグ : みずさし
- ブックマーカー : 栞(しおり)
では、こういった「情報差」はこれからも存在し続けるでしょうか?答えはおそらく「YES」です。
結局のところ、この「情報差」は個々の消費者が属する地域・文化(コミュニティ)や年齢・性別、さらには個人の経験によって作られる「常識」によって生み出されるからであって、その差はなかなか埋まるものではありません。
マーケティング施策としての「情報差」の使い方
これだけ世界の情報がインターネットでいくらでも入手できるとはいえ、人々のそれぞれの文化に根ざす常識はかたく、常識の埒外にある情報は自然と除外されています。ということは、いまだにマーケティングの入る余地・情報の非対称性は存在していると筆者は考えます。
ではたとえば、「情報差」に対するマーケティング的アプローチはどんなものがあるのでしょうか?
情報差を埋めるコンテンツマーケティング
消費者にとって必要な情報を掲載したコンテンツを用意し、消費者に情報を提供することで売り手と買い手の情報「差」を埋めるのがコンテンツマーケティングです。専門性の高い商品や、生産者のみが知っている商品の良さが伝わっていない場合に有効なアプローチです。
ソーシャル時代の情報差
一昔前までは生産者が情報強者、消費者が情報弱者という構図でしたが、いまではブログ・SNSの普及によりこの構図が逆転しているケースもあります。生産者よりも消費者のほうが多くの情報を持っていることがあり、今度は生産者が情報を取りにいくことが必要な状況となっています。コンテンツマーケティングとは反対に、生産者が情報を発信するのではなく、消費者が発信した情報を生産者が取りにいくのがソーシャルリスニングです。
と、いうように、まだまだ余地のある「情報差」に着目して、「売り手」視点「買い手」視点双方向でマーケティングについて考えてみませんか?
ウフルでは情報差を埋めるランディングページなどのコンテンツ作成はもちろん、Salesforce Social Studio を利用したソーシャルリスニングレポート作成も承っております。消費者と企業間の「情報差」をデータドリブンで洗い出して最適な提案をさせていただきます。
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フルタ
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