当ブログでも人気コンテンツとなっている「マジックナンバー7±2の間違いと真実」。
よく間違われて語られるケースの多い事象について取り上げさせていただいたわけだが、反響も多いことから、もう少し補足させていただきたい。
大事なのはチャンクとして情報をまとめること
提言者とされるミラーの論文に例として挙がっているのが、無線通信の話だ。
トンとツーの組み合わせで情報を成すこの通信手段、初心者が聞くとバラバラのトン・ツーにしか聞こえない。しかしながら、訓練を積むことでそれが文字として認識できるようになり、更には単語というまとまりで認識できるようになる。
これは、学習によりトンとツーがパターンとして体系化され、一度に認識できるチャンクの塊が大きくなることを意味している。IAに関する記事で述べたDIKWモデルにおける、知恵への転換と同じ理屈だ。
記憶できる範囲が4であろうが7であろうが、暫定的なまとまりとして認識できる情報の含有量が増えていくことで、一度に認識できる情報の絶対量は増えていくのだ。
だからこそ、大事なのは先ずどのようなチャンクとして認識させるか、そしてその経験則を活かして発展的な情報展開を行っていくということなのだ。
ミラーの研究は絶対判断の研究
ミラーの論文の話に戻そう。
氏の論文は、邦訳版で32ページほどの構成なのだが、誤解されがちなマジックナンバーの話は実はそのうち5ページ程度しか占めていない。そして、上述のチャンクの話が更に5ページ。残る20ページほどは、絶対判断の話や情報理論の話で構成されている。
中でも絶対判断の話が15ページほどを占めている点は興味深い。
絶対判断とは、要はどのように分別をしていくかの判断力の話だ。
例えば音の絶対判断の実験では、複数の刺激音を用意し、それが予め用意されたどの分類に該当するかを選んでいく。最初は2つの音から始め、数を増やしていくわけだが、5種を超えると弁別成果が落ちてくる。
実は、ミラーが7±2と語っている内容は、記憶の範囲よりもこの絶対判断の範囲を指していると捉えられるのだ。それも、以前の記事に書いたように、曖昧な表現で。
取り扱える情報の絶対量は増やせる
さて、話が分かりにくくなってきているかもしれない。
だが、マジックナンバー7±2の真実を知るにはここまでの話は非常に重要だ。
ミラーが語っている情報を総合すると、「チャンク」は学習により可変な領域であり、「絶対判断の量」(=ビットとミラーは呼んでいる)こそが固定的なのだ。
一つのチャンクの中にどれだけのビットをグループ化し、組み込めるかによって人が一度に取り扱える情報の量は異なってくる。そこには、経験則を活用したナーチャリングの設計が必要となる。無線通信士のトン・ツーを文字や単語としてグループ化して認識させる要領だ。
マーケティングにおいては、例えばランディングページの設計などでは同一ページ内でこういった学習のスパイラルを組み込むことができる。ファーストプレビュー内のインデックスやバレット情報で最小単位のビットで構成されたチャンクを用意し、個別の説明部分ではビット数を増やしていくといった具合に。そして、その一度に取り扱えるチャンクの量としては、コーワンが提唱する3~5を割り当てて考えることが、情報設計としてはより効果的だ。
こういったランディングページ制作のテクニックは、話せば長くなるのでまたの機会に詳しく述べさせていただくとしよう。
人の認知の世界というのは実に奥深く、ちょっとした技で短時間での学習を推し進めることが可能なのだ。
タナカさん
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