若者のバイク離れは本当か?ソーシャルリスニングと販売実績で調べてみた。

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こんにちは。マイク齋藤です。前回は女性向けの製品をご紹介したため、今回は趣向を変えてバイク市場について分析を行ってみたいと思います。

現在の二輪車の新車市場について

日本経済新聞によると、現在、日本国内のバイクの新車市場は1982年の326万台をピークに右肩下がりが続いており、2015年には全盛期の87.7%減の40万台規模にまで落ち込んでいます。購買者も40-50代のリターンライダーが中心であり、需要の先細りが心配されています。

また市場の縮小から50cc以下の原付バイクでは、Hondaとヤマハが生産/開発で協業の検討を開始するなど、今後の長期的な市場の維持・拡大のためにも、新規購買層の獲得が急務と言えます。

若者のバイク離れに変化アリ?

ところが現在、そんなバイク市場にちょっとした変化が起きていると言われています。
比較的排気量が小さい50cc~250ccの軽二輪・小型自動二輪市場において、車検が不要で維持費が安いことに加えて海外生産による割安な価格が20-30代に響き、若者による販売台数が伸びているのです(参考記事:復活のカギは逆輸入 割安価格で「バイク離れ」阻止)。

また、二輪車のメーカー別市場シェアは、前述の日経の記事によると2015年時点ではHondaが43.0%と首位を占め、ヤマハが次いで27.2%です。1970年代後半から1980年代前半にかけて、Hondaとヤマハはバイク市場においてし烈な販売競争を行っていた時期があり、この「HY戦争」はマーケティング史においても有名です。HY戦争以後、二輪車の市場ではHondaがシェア1位、ヤマハが2位という構図が維持され、現在に至っています。

ところが、2015年中頃より、軽二輪・小型自動二輪市場においてヤマハがHondaの販売台数を上回ってシェアトップとなったのです(図1)。

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図1:日本における軽二輪・小型自動二輪市場の販売台数推移(移動年計)
※集計期間:2014年1月~2016年12月。全国軽自動車協会連合会統計/軽二輪・小型自動二輪市場県別新車販売台数をもとに、筆者加工。

ソーシャルメディアでの話題量は?

それでは、比較的若者にユーザーの多いSNSの話題量は、どのようになっているでしょうか。Honda・ヤマハのバイクに関する話題量を抽出してみると、こちらも東京モーターショー開催前後の2015年11月に、ヤマハはHondaを超えています(図2)。

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図2:日本におけるHonda・ヤマハのバイクに関する話題量推移(移動年計)
※集計期間:2014年1月~2016年12月。集計対象:Twitter、Blog、掲示板など。ソーシャルリスニングツールSocial Studioにて抽出。

それでは、どのようなことが話題になっているのでしょうか。

ソーシャルメディアでの活動に力を入れるヤマハ

図3-1・図3-2は、それぞれHondaとヤマハのバイクに関して2015年10月~12月にSNS上で話題にされていたキーワードです。
Hondaが「値引き」、「中古」など実購買に関する話題が中心であるのに対し、ヤマハは「#お前らがもう忘れたもの」や「#ニャマハ(当時開催されていた東京モーターショーのヤマハの公式キャラクター)」、「#yamahaが美しい」というハッシュタグや、「φωφ(ニャマハのアスキーアート)」が共起されています。

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図3-1:Hondaのバイクに関するキーワード分析
※集計期間:2015/10/1~12/31。

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図3-2:ヤマハのバイクに関するキーワード分析
※集計期間:2015/10/1~12/31。

中でも「#yamahaが美しい」というハッシュタグは現在もヤマハユーザーが自身のバイク写真や動画をSNSへ投稿する際に使われており、ヤマハの公式アカウントがその投稿をRTしたり自身も写真を投稿するなどして、ファンと企業間のコミュニティが形成されています。

私自身がヤマハに乗ったきっかけもソーシャルメディア

私自身の話になって恐縮ですが、私は昔Hondaのバイクに乗っていました。ところが社会人になって転倒してケガをし、会社を休むことになってしまって以来、バイクに5年以上乗っておらず、バイクへの関心を失っている状況でした。

もともとHondaユーザーでヤマハのバイクはラインナップさえ知らず、興味も持っていなかったのですが、ヤマハの新型バイク試乗会の感想レビューを偶然人気YouTuberヒカキン氏の動画を通して知り、関心を持って実購買に至った経験があります。

実際この新型バイク「トリシティ」は、バイクユーザーの若返りを図ったモデルであり、ソーシャルメディアを活用したプロモーションが展開されました。TVCMに元AKB48の大島優子を起用し、免許を取得させる動画を作ったり、Twitterで大喜利をやったり、モニターキャンペーンでユーザーにバイクを抽選でレンタルし、ツーリングの写真や感想をソーシャルメディア上で公開するキャンペーンを展開しています。

(↓TVCM)

私もこのバイクを購入して以来、楽しくてハッシュタグをつけて投稿し、それを通して同じバイクに乗るユーザーと友達になれました。彼らとの会話は今後のツーリング計画の参考になり、実際これによってツーリングが新たな趣味になりました。

現在では、少し排気量の大きい新しいバイクの購入を検討しています(一番よくある「バイク沼」のはまり方ですね)。

まとめ

このように、一般的に市場が縮小しているとされている業界でも、今までとは違う切り口でプロモーション戦略を検討することで新たな(今回で言えば20-30代の)マーケットを広げることは十分に可能と言えます。

余談ですが、ヤマハは「エンジン」をテーマにしたLINEスタンプも発売しており、どこか狂気を感じるそのスタンプがネット上でも話題となるなど、尖ったプロモーション戦略も実施しています。

もちろんこれだけのデータでは、こうしたプロモーションがどれほど実際の売上に寄与しているかは定量的に明らかにできませんが、販売台数と話題量の相関、及び実際にユーザーコミュニティ自体が盛り上がりを見せていることからも、ソーシャルメディアの活用がヤマハファンの維持・拡大に貢献していることは疑いがないと言えるでしょう。

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マイク齋藤

大阪府出身。京都大学大学院経済学研究科修了(専攻:消費者行動論)。メーカーにて勤務後(営業・マーケティング)、ウフル・マーケティングインテリジェンス本部所属。長岡技術科学大学大学院講師(非常勤)。 「ヨリミチスト」を自称しつつ、面白そうな事を見つけては、直観的に手を出しては挫折したり、そこそこ続いたりしている。最近の趣味はウクレレ(講師経験あり)、銭湯めぐり、近距離ツーリング、離島散策(八重山諸島・特に波照間島/鳩間島と奄美大島がお気に入り)。今年は時間を見つけて、ダイビングのライセンスを取ろうと画策中。
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