プロジェクトマネジメント vol.5 -プロジェクトのスコープは?炎上原因の多くはこれ

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ベンダー 「お客様できました。納品いたします。」
クライアント 「ありがとう。いい出来だと思う。ところで、ここの機能なんだけど、こういう風にしたほうがいいんじゃないか?」
ベンダー 「いえ、お客様、仕様書にはそのようなことは記載されておりませんので。」
クライアント 「いやいや、君達プロなんだろ。この機能は常識的にどのサービスでも搭載されているだろ。当たり前についてくると思っていたよ。」


このようなやり取りを経験をされた方は少なくないだろう。情報の非対称性にも近い、個人の認識の違いというのは、あらゆる場面でトラブルをもたらす。一方にとって当たり前のことはもう一方にとっては全く当たり前ではないのだ。

プロジェクトにおいてこの話は、笑い事ではすまない。例えば、家を建てたとき、設計図にトイレがなかった。完成した後にお客様に見せたら、トイレがない家なんて考えられない、というような話になった場合、できる手段は、仮説トイレを設置するか、家を作り直すかということになる。
プロジェクトマネージャーはこういう認識の違いを事前に把握して、キッチリと認識合わせをしておく必要があるのだ。

スコープの決め方

scope*
スコープとは範囲のことを示している。プロジェクトスコープはどこまでをプロジェクトの範囲にするかということになる。
「お客様はドリルを欲しがっているのではない、ドリルで作る穴を欲しがっているのだ。」
プロジェクトの目的がスコープに大きな影響を与える。つまり、要求事項(このプロジェクトが一体なにを必要としているか)を考えることがスタート地点となる。
要求事項は、プロジェクト、ビジネスのニーズや品質、ソリューション、機能などの成果物(プロジェクトの結果として生まれるもの)の特性を示すものになる。

要求事項を収集するには、インタービューやディスカッションなどのワークショップで明確にすることだ。
その際に非常に重要なのは、要求事項を文書化することだ。この文書化された、要求事項文書がスコープを定義する上で非常に有効なインプットとなる。


(例)
クライアント 「井上君、最近はYouTubeを使った動画マーケティングが流行っているらしいんだが、うちでも取り組むべきではないかね。」
N 「いいアイデアだと思います。動画は有効なプロモーション手段です。ところで、現在はどのような点を課題だと感じられていますか?」
クライアント 「うちのサイトは、多額の広告費を使っているんだが、コンバージョン率がイマイチなんだ。これは恐らくブランド力の不足ではないかと思うので、動画をつかってブランド力を強化したいんだ。」
N 「なるほど、ごもっともです。一方で頭に入れておく必要があるのは、ブランド力の強化は1日2日で成し遂げ得るものではないので、長期的な観察が必要となりますが、どの程度のスパンでお考えですか?」
クライアント 「それは困る。ウェブのプロモーションは費用対効果がすぐに見えることが利点だ、すぐに投資効果を上げることができる方法が必要なんだ。」
N 「わかりました、つまりお客様は短期的に売り上げを上げることがビジネス的に必要と考えていらっしゃるのですね。もしかすると、サイト構成の見直しや、CRMプログラムの導入など、動画より良い方法が有るかもしれませんので、一度詳しくお話をお伺いする機会をいただけますか。」


ここでいう動画を使ったマーケティングが一つのスコープだとすると、お客様の要求事項は短期的に売り上げを伸ばすこと、となる。
スコープと要求事項がズレているとプロジェクト期間中、もしくは終了後に必ず、問題が起きる。場合によってはスコープの決め直しなどの大きな手戻りが発生することもあるのだ。要注意。

プロジェクトマネージャーとして大切なことは、しっかりとコミュニケーションを取って、要求事項とスコープをしっかりと関連したものにしておくということになる。

スコープを決めたら文書化しておく

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スコープを決める際にさらに気をつけておきたいことがいくつかある。まずは、成果物は何かということ。プロジェクトの目的はより概念的なものになるが、それを目に見える成果物に落とし込まないといけない。
売り上げ金額などはわかり易いが、「働きやすい職場を作る」のようなプロジェクトの場合は測定が難しいということもある。その場合は、例えば、離職率何%以下や残業時間何%削減など、具体的な数値にしてしまうのは良いアイデアだろう。

あとは、前提条件制約条件がある。
前提条件は当然の状況として仮定しているもの。例えば、ウフルには優秀なエンジニアが沢山いるということを前提条件として、高い技術が要求される案件を沢山相談いただくということになる。
一方で制約条件は、スーパーエンジニアのYさんは仕事が手一杯で新しい案件を受けることができないので、手の空いている新人エンジニアで新しい案件を回さなければいけないというものである。
この例は人的リソースにおける制約だが、他にも、予算や納期、品質など様々な点が制約条件となる。
つまりできないことをできると言ってしまうと大変な目に遭うこともあるということだ。

必ず、自社や自分のチームの得意不得意を理解して、スコープを決定することが重要だ。
そして細かくスコープを決めたら、必ず文書化することだ。できる限り契約文書にして、予測できる限りを文書という形にしてクライアントとの認識をすり合わせておくべきである。

次回は、具体的なスコープを実現し、成果物を作るまでの方法を紹介しよう。
* image:photo by Michal Rybski (http://jp.freeimages.com/photo/aim-1177938

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NOWAY

ウフルのOB(2016年1月末卒業)。1980年岡山県出身。青山学院大学ビジネスクール(ABS)卒。MBA、PMP(R)、プロキックボクサー(現役、NEXTLEVEL渋谷成田組所属)。専門分野はプロジェクトマネジメント。ただいまウフルシック中。
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