以前、マーケテイングで使える5つの心理学手法をお届けさせていただいたが、是非押さえておいて欲しい手法はまだまだある。
そこで今回は、これまた5つほど厳選してお届けさせていただく。
…決して出し惜しみしているわけではないので悪しからず。
一貫性の原理
何事においても、統一性がないよりはある方が良いというのは誰しもが思うことであろう。
それは物に限らず、行動・発言・信念といった非物理的対象に関しても同様だ。こういった統一性ないし、一貫性を求める心理的欲求を「一貫性の法則」と呼ぶ。
これを販売戦略などに応用した方法が、低価格のものや無償提供のサンプルから始め、徐々に要求を上げていくという、言葉だけ捉えれば少し恐ろしい戦略だ。
バンドワゴン効果
購入者や利用者が多いほどに、人は安心感や満足感を得る傾向がある。
これを称してバンドワゴン効果と呼ぶ。パレードの先頭の楽隊車の雰囲気につられついて行ってしまう…といった意味だ。
みんな使ってるから安心、というのはわかりやすいが、ともすれば「赤信号、みんなで渡れば怖くない」に繋がる点は要注意だ。
単純接触効果
接する機会が多いほどに、好意が上がるという法則。別名ザイアンスの法則。
これは例えばクラスメートなどを想起してもらうと分かりやすいかもしれない。殆ど接点のなかった同級生でも、同級生というだけで認識は変わるし、多少なりとも接点があればその印象もより深くなるのではないだろうか。
近年では執拗なまでのリターゲティング広告により嫌悪を示すケースも出ているが、これは求めていない時点で接点が表れてしまうといった状態に該当し、嫌な思い出と共に接点が存在するといった状態といえる。過度な露出でなければ、知らないものよりも見聞きしたことがあるものの方が優位に位置するというのが、本来の広告露出であることを付記させていただく。所謂「ゴリ推し」でなければ、よく見る芸能人なども、最初はどうとも思わなかったのが好感を持つようになった経験などもあるのではないだろうか。
ディドロ効果
例えば衣服などでファストファッションを中心に揃えていたものに、少し高級なものが混じり始めた場合。
どちらか一方に揃えて行こうと考えると、高級なものの方に統一する意識が働きがちだ。
これは単なる見栄の問題ではなく、ディドロ効果と呼ばれる心理学的効果なのだ。
この効果を得る最初の一品はプレゼントなどでも良かったりする。
社会的証明の原理
人の行動につられて自らも行動を行ってしまうという法則が社会的証明の原理だ。
特に身近な存在の行動はより効果的であり、「○●さんがこの商品を買いました」といった通知があると、背中を押される効果は高くなる。
これらが応用されている身近な実例
さて、今回は少し駆け足に5つの心理学手法を紹介させていただいた。
そこで気付いた方もいるのではないかと思うが、今回は敢えて似通った手法を選ばせてもらった。単純接触効果を挟んで、一貫性の原理とディドロ効果、バンドワゴン効果と社会的証明の原理。これらは非常に近しい効果を持った手法だ。
近しいが、同一のものではなく、掛け合わせで用いやすいものでもある。
実際のところ、ソーシャルゲームなどのマーケティングではこれらの手法が多用されていたりする。
テレビCMやディスプレー広告の多用はもちろん単純接触効果を生む。
そして、基本プレー無料のフリーミアム戦略により自らの庭に引き込み、徐々に要求を上げていくのは一貫性の原理の応用だ。場合によっては単一のゲームだけではなく、同社の関連ゲーム間での連携などを通して複数ゲームへと導く。
ここに利用者○●万人といったバンドワゴン効果を追加し、安心感を与えた上で、ゲーム内の蒐集要素に、アイテム課金要素のディドロ効果を交える。そのハードルを下げるために、ゲーム内の友人などの購入履歴などを表示する…といった具合だ。
何かと「射幸心を煽る」といった問題だけで語られがちなソーシャルゲームのマーケティング戦略は、ただ単純なガチャガチャだけの話ではなく、巧妙に様々な心理学的効果が用いられているのだ。
タナカさん
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