モバイルアプリの効果の真偽

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北米ではオンラインメディアでの利用デバイスの50%をモバイルアプリが占めているというデータが出てきている。
もちろん日本とアメリカの差というのはあるが、これはこれで重要な指標となるデータであることには違いない。
では、モバイルアプリ化をどんどん推し進めたほうが良いのか?今回はそこを少し考えたい。

顕著な違いを示すECサイトのデータ

Criteoのレポートによると、こちらも圧倒的にモバイルアプリが優勢だ。
・商品閲覧数 4.6倍
・カート追加率 2.5倍
・コンバージョン率 3倍
といった具合だ。

しかしながら、この数字をそのまま額面通り受け止めてしまって良いのか?
…ここには考えさせられるところが多分にある。

まず考えなくてはならないエンゲージメントの差

残念ながら具体的な数字のある話ではないのだが、自分に置き換えて考えてみて欲しい。
モバイルアプリをダウンロードして継続的に用いているものというのはお持ちだろうか?
比較的多くの方がアプリで用いているものといえば、FacebookやTwitter、Instagram、LineといったSNS系のものや、地図アプリなど。それ以外で人気のものでは、cookpadや食べログ、Amazon、ゲーム系といったところ。要はそもそも日常的に使う頻度が高いからこそ、アプリで利用しているというものがほとんどではないだろうか。
こういったモバイルアプリと利用頻度の低い、あるいは偶然見つけた初めて用いるECサイトとで比較してしまうと、大きな差が出ても不思議はない。そもそもが、ダウンロードして、スペースを用意して、場合によってはバックグラウンドでCPUやメモリを使われて、それでも日常的に使おうという意思を持って準備しているものと、一見様として用いるものでは購買動機が大きく異なるのだから。

つまり、モバイルアプリを用いているユーザーというのは、その時点でファンとしてのエンゲージメントがなされたユーザーなのだ。
一か月にひとりのユーザーが用いるモバイルアプリの数は25個程度と言われており、新規のアプリは既存の25個としのぎを削って自らの居場所を確保しなくてはならないという現実も忘れてはならない。

進化するWebアプリ

さて、こういった動機の差以外に、モバイルアプリの利便性としてよく挙げられる点に、UIの良さや、オフライン環境でもある程度用いることが可能といった点がある。
しかしながら、技術は進歩している。Webアプリ側でもPWA(プログレッシブウェブアプリ)という技術が提唱されており、オンライン時に情報をキャッシュしておき、オフライン時でも閲覧できるようにしたり、PUSH通知を受け取ることができるようにすることも可能なのだ。
UI的にも例えば一休.comのように、Webアプリでもモバイルに特化することで、遷移も少なく、モバイル端末からの使い勝手も決してモバイルアプリに劣らない。
簡易的なレスポンシブ対応でスマートフォン対応を行うのではなく、しっかりと専用に作りこめば、Webアプリは、審査やOSごとの開発が不要であり、検索やURL伝播での集客力も持つ分、ネイティブアプリよりもROIが高いとも言える。

アプリ検討はケースバイケース

とはいえ、実装可能な機能の差という意味合いにおいては、軍配がモバイル(ネイティブ)アプリに上がることに違いはない。だが、ネイティブアプリでないとできないことが必要なモバイルアプリがどれだけあるのか、結局のところハイブリッドアプリ(WebビューでHTML表示)で誤魔化していないかなど、検討すべきポイントは多い。
限られた予算で最適化の不十分なネイティブアプリを作ろうものなら、Webアプリの方が早くて快適、折角入れたものの、二度と使わない、アプリストアでの評価も下がり、機会損失に繋がってしまうといったマイナスのスパイラルに陥ってしまうことだってある。

本稿は決してモバイルアプリに反対する意向のものではない。
しかしながら、安直にモバイルアプリに走る前に、色々検討すべき点があることは認識すべきだろう。
モバイルアプリはしっかりと作りこんで、しっかりとユーザーの心を掴めれば、囲い込みを行う強力な武器となることに間違いはないのだから。

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タナカさん

兵庫県出身。2003年東京外国語大学大学院修了(学術修士)。ウフル・マーケティングインテリジェンス本部(旧マーケティングクラウド本部)のたぶんちょっとエライ人(弊社CSOの田中正道とは別人)。 データドリブンなマーケティングに関して、その仕組みの設計からクリエイティブまで経験。趣味はバルトやデュルーズといった現代思想の研究から草の根音楽活動までと多岐に渡る。要するにオタク。
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